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大規模総合大学における早期合格確定者を対象としたe-Learning
1.背景
近畿大学では、従来、学部単位で希望者に対して入学前リメディアル教育を講義、CD-ROMなどにより提供してきた。しかし、ここ数年、推薦入試合格者、AO入試合格者などの比率が高くなり、さらにゆとり教育により、相対的な学力の低下が大きな問題となってきている。たとえば、物理を学習していない(理工学部)、数学の基礎が身についていない(経済学部)、レポートが満足に書けない(全学部共通)などの学生が目立ちはじめている。このようなことから、入学前に基礎学力の底上げをすることが急務となった。
2.e-Learningによる入学前リメディアルの実施
近畿大学は、11学部からなる総合大学であり、毎年、一般推薦入試、附属高校推薦入試、指定校推薦入試、AO入試などにより非常に多くの学生が入学する。これらの早期合格確定者(以後、対象学生)に複数科目をきめ細かくかつ効率的にリメディアル教育すること(下表参照)は容易なことではなく、その解決方法の一つとしてe-Learningを導入することにした。
早期合格確定者のリメディアル教育科目
| 科目 | 英語 | 数学 | 化学 | 物理 | 生物 | 日本語 | | 理工学部 | ○ | ○ | △ | △ | △ | ○ | | 生物理工学部 | ○ | ○ | △ | △ | △ | ○ | | 経営学部 | ○ | △ | | | | ○ | | 経済学部 | ○ | △ | | | | ○ | | 法学部 | ○ | | | | | ○ | | 産業理工学部 | ○ | ○ | △ | △ | △ | ○ | | 短期大学 | ○ | | | | | ○ |
| ○:必須項目 △:選択科目
3.早期合格確定者のPC環境
対象学生(平成18年度:1322名)がe-Learningを使った学習をするにあたって、PC環境のアンケート調査を行った結果を以下に示す。
<主な学習場所>
1:自宅(80%)
2:高校(11%)
3:図書館(3%)
4:その他(6%)
<パソコン所有状況>
1:家族と共用(68%)
2:自分専用(26%)
3:なし(6%)
これらの結果から、インターネット接続できるパソコン保有者は全体の94%と非常に高く、PC環境には問題ないといえる。また、対象学生はパソコンを使ったe-Learningに対する抵抗や支障をほとんど持たなかったことがわかった。このことは、 大学側から、対象学生が高校に設置されているパソコンをe-Learningとして使用できるよう、お願いしたことも大きな要因であろう。
4.近畿大学におけるe-Learningリメディアルの特長
言うまでもなくe-Learning方式のメリットは自分のペースで学力を補強できることである。しかし、未履修科目や苦手分野の自習には、「意欲的に学習を継続させる」ための魅力的なコンテンツや学習方式、およびメリットを最大限生かすための「学習サポート」が不可欠である。近畿大学では、きめ細かな学生へのケア、添削による指導と丁寧な解説を「専任教員」「教務」、および「外部業者」が連携して行なった。
本大学のe-Learningにおける主な特徴は以下のとおりである。
a. コンテンツ&LMS(ラーニング・マネジメント・システム)には、良質で、きめ細かな学習管理が可能な既存のシステムを改良して採用した。
b. 提供の方法は、リアルタイムに学習履歴が把握でき、双方向でのやりとりが可能なASP方式を採用した。
c. 学部学科の担当教員が各学生の進捗状況をリアルタイムで把握できる「管理支援機能」を取り入れた。
d. 教員からのメールによる学習指導・学生へのアドバイスの自動配信、添削指導など、きめ細かに対応した。
さらに、対象学生からの質問メールに対する回答が遅いと学習意欲の低下につながるため、1両日中に回答を行い、さらに携帯電話のメールに知らせる機能により学習者のストレスを軽減した。
5. e-Learningの成果
<学習状況>
対象学生がアクセスした割合を(図1)に示す。最終的にアクセスした学生の割合は、4学部(理工、経済、経営、法)で90%以上であることがわかる。したがって、これら4学部ではほぼ全学生が学習に取り組んでいるといえる。また、産業理工、短大、生物理工学部の学生のアクセス割合も76~86%と高く、大多数の対象学生がe-Learningを行っていることがわかる。これら3学部で少し低かったのは、開始時期の遅れが影響したものと思われる。さらに、週ごとのアクセス割合が時期によらず50~70%であり、学部間の差があまりみられなかったことから、学部によらず多くの学生が計画的に学習したことがわかった。
<達成度>
全6教科において、e-Learningの最後に達成度を測るための最終テストを行った。全学部において必修科目であった英語と日本語の最終学習進渉率(最終テストにおける達成度)は、英語72~85%、日本語は66~82%(いずれも後発3学部を除く)であり、高校で習得すべき基礎的事項をほぼ理解できる学力レベルにあると推測される。 以上述べたように、きめ細やかなサポートケアシステムを備えたe-Learningにより入学前リメディアルを実施することは非常に有用であるといえる。
6.入学後のe-Learning
近畿大学では入学前リメディアル教育に引き続いて、入学後においても全学生を対象に基礎的な科目を重点的に学習させている。理工学部では基礎科目として線形代数、微分積分学、初修化学、初修物理学、初修生物学を、共通教養科目には日本語表現法を配置している。これらの科目は、高校レベルの内容を適宜取り入れながら専門基礎科目への橋渡しをする役割を担っている。現在、初修物理学および日本語表現法では、授業とリンクしたe-Learningを取り入れており、多くの学生(初修物理学:1623名、日本語表現法:約725名)が授業内容の理解度アップに役立てている。両科目は複数教員が同一内容の授業を行っており、e-Learningの達成度を比較することでクラス間格差をなくすことにも役立っている。さらに、e-Learningは場所を問わず自学自習できることから、学生の評判も非常によい。今後、理工学部の他科目、および他学部でも本システムの運用を検討している。
7.まとめ
大規模総合大学において入学前リメディアル教育を組織的に行っていくための方法としてe-Learningが有用であることがわかった。さまざまな情報ツールを積極的に活用することで、大人数の学生に対してきめ細かに学習をサポートすることができ、その結果、学生が前向きにe-Learningに取り組むことが明らかとなった。さらに、本システムは入学後の基礎科目へも適用可能であることを見出している。
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